「医療DX推進体制整備加算は、うちは加算いくつが取れるのか」——長らく事務長・院長からの相談で最も多かった問いですが、この加算はすでに存在しません。令和8年度診療報酬改定により、医療DX推進体制整備加算と医療情報取得加算はいずれも廃止され、令和8年6月1日から「電子的診療情報連携体制整備加算」に再編されています。
本記事では、何がどう変わったのか、新加算の点数と施設基準、自院がどの区分を狙えるかの判定手順を、事務長・院長向けに整理します。告示値や疑義解釈は今後も更新されうるため、最終的な判断は厚生労働省の最新通知をご確認ください。
令和8年度改定で何が変わったのか
改定の概要資料には、次のように明記されています。
医療DX関連施策の進捗等を踏まえ、医療DX推進体制整備加算・医療情報取得加算を廃止し、マイナ保険証の利用、電子処方箋、電子カルテ共有サービス、サイバーセキュリティ対策等に係る新たな評価を新設する
改定率は診療報酬本体で+3.09%(令和8年度・令和9年度の2年度平均)、施行日は令和8年6月1日です。薬価改定は4月1日ですが、医科の本体部分は6月1日施行である点に注意が必要です。
新旧対照
| 区分 | 改定前(〜令和8年5月31日) | 改定後(令和8年6月1日〜) |
|---|---|---|
| 医科 初診料 | 医療DX推進体制整備加算1〜6(12/11/10/10/9/8点) | 電子的診療情報連携体制整備加算 1=15点/2=9点/3=4点 |
| 医科 再診料・外来診療料 | (設定なし) | 同加算 2点(新設) |
| 医科 入院 | (設定なし) | A207-5 同加算 1=160点/2=80点(入院初日・新設) |
| 医療情報取得加算 | 初診1点・再診1点 | 廃止 |
| 歯科 初診 | 医療DX推進体制整備加算1〜6 | 電子的歯科診療情報連携体制整備加算 1=9点/2=4点 |
| 調剤 | 医療DX推進体制整備加算1〜3 | 電子的調剤情報連携体制整備加算 8点(一本化) |
あわせて診療録管理体制加算も再編されました。旧加算1(140点)は削除され、新たに加算1=100点、加算2=30点の2区分になっています。旧加算1相当のセキュリティ・BCP要件は、入院版の電子的診療情報連携体制整備加算へ移設された形です。
200床以上の病院であれば、「診療録管理体制加算1(100点)+電子的診療情報連携体制整備加算1(160点)」を入院初日に狙う構図になります。
新加算の施設基準は「11項目の3階層」
外来における施設基準は11項目で構成され、どこまで満たすかで区分が決まります。
| 区分 | 点数 | 必要な要件 |
|---|---|---|
| 加算1 | 15点 | (1)〜(11) すべて |
| 加算2 | 9点 | (1)〜(8) すべて + (9)(10)(11) の いずれか1つ |
| 加算3 | 4点 | (1)〜(8) のみ |
基本要件(1)〜(8)——加算3のライン
- オンライン請求を行っていること
- 明細書を無償交付していること
- オンライン資格確認の体制があること
- レセプト件数ベースのマイナ保険証利用率が30%以上であること
- (4)は算定月の3月前の実績。前月・前々月の実績への代替も可
- マイナポータルの医療情報等に基づく健康管理相談の体制があること
- 医療DX推進体制等について院内掲示していること
- (7)の内容を原則ウェブサイトにも掲載していること
ここまでが加算3(4点)のラインです。多くの医療機関にとって、既存の体制からの延長で到達できる水準といえます。
上乗せ要件(9)〜(11)
- 電子処方箋の発行体制、または調剤情報を電子処方箋管理サービスへ登録する体制
- 次のア〜ウすべて、またはエを満たす電子カルテを有すること
- ア 医療情報システムの安全管理に関するガイドラインに準拠した体制
- イ 電子処方箋管理サービスとの接続インターフェース
- ウ 電子カルテ情報共有サービスとの接続インターフェース
- エ 厚生労働省が認証する電子カルテ製品であること
- アを満たす、またはイ及びウを満たすこと
- ア 電子カルテ情報共有サービスにより取得される診療情報等を活用する体制
- イ 地域の複数医療機関で診療情報を共有・閲覧できるネットワークを活用する体制
- ウ 検査・画像情報提供加算または電子的診療情報評価料の施設基準を届出済みで、共有実績のある医療機関名を院内掲示していること
電子カルテ情報共有サービスは「必須」ではありません
ここが実務上、最も誤解されやすい部分です。要件に名前は出てくるものの、現時点で必須ではありません。理由は2つあります。
理由1:接続インターフェース要件には「当面の間」のみなし措置がある
施設基準通知には、(10)ウについて次の規定が置かれています。
当面の間に限り、当該基準を満たしているものとみなす。ただし、保険医療機関は、国等が全国で電子カルテ情報共有サービスの運用を開始した場合には、速やかに導入するように努めること。
以前は「令和7年9月30日まで」「令和8年5月31日まで」と期限付きでしたが、令和8年6月1日以降は**期限の定めがない「当面の間」**に変わりました。必須化の期日は、現時点の告示・通知には明記されていません。
理由2:(11)は地域医療情報連携ネットワークで代替できる
(11)は「電子カルテ情報共有サービスの活用」と「地域医療情報連携ネットワークの活用」の択一です。国のサービスに参加しなくても、適格な地域ネットワークがあれば加算1に到達できます。
ただし、(11)イの地域ネットワークには具体的な要件が設定されています。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 参加規模 | 参加保険医療機関10以上、うち診療情報を開示している病院が2以上 |
| 登録患者数 | 1,000人以上、または新規登録が年間100人以上 |
| 情報公開 | 運営主体が連携医療機関名と登録患者数をウェブサイトで公表 |
| 活用実績 | 受診患者のいずれかについて、概ね2月に1回以上の閲覧または共有 |
疑義解釈では、チャットやメーリングリストで診療情報を共有する汎用サービスは要件を満たさないと明言されています。「ICTで情報共有している」だけでは足りず、検査・画像情報提供加算等の施設基準を満たすネットワークであることが求められます。
補足:認証制度はまだ動いていません
(10)エの「厚生労働省が認証する電子カルテ製品」については、認証制度そのものが未整備です。疑義解釈でも「検討中」とされており、審査は令和8年度冬頃、認証開始は令和9年度早期の想定とされています。現時点で「認証製品だから要件を満たす」という説明は成立しません。
マイナ保険証の利用率要件は大幅に緩和されました
旧制度から最も大きく変わった点です。
| 制度 | 加算1 | 加算2 | 加算3 |
|---|---|---|---|
| 旧・医療DX推進体制整備加算(令和8年3〜5月) | 70% | 50% | 30% |
| 新・電子的診療情報連携体制整備加算 | 30% | 30% | 30% |
新加算では**全区分一律30%**です。旧加算1の70%というハードルを前に上位区分を諦めていた医療機関でも、新加算では加算1を狙える余地が生まれています。
なお、この利用率要件と(6)の健康管理相談体制については、地方厚生局への届出は不要とされています(満たしていればよい)。
入院版は要件がまったく別物です
A207-5の入院版(160点/80点)は、外来版とは設計思想が異なります。(1)〜(8)は外来と共通ですが、(9)以降はサイバーセキュリティ・事業継続性の要件で構成されています。
- 医療情報システムの安全管理に関するガイドラインへの準拠
- 専任の医療情報システム安全管理責任者の配置、年1回以上の職員研修
- 複数方式でのバックアップ、うち一部はネットワークから切り離したオフライン保管
- BCP(事業継続計画)の策定、年1回以上の訓練・演習
加算1は全13項目、加算2は(1)〜(11)を満たす構成です。入院版に電子カルテ情報共有サービスの要件は含まれていません。
届出は改めて必要です
見落としやすい実務ポイントです。
令和8年5月31日時点で医療DX推進体制整備加算・診療録管理体制加算を届け出ていても、電子的診療情報連携体制整備加算については改めて届出が必要
旧加算の届出は引き継がれません。届出様式は外来が別添7 様式1の6、入院が別添7 様式18の4です。初診料について届出を行っていれば、再診料・外来診療料の追加届出は不要とされています。
なお、初診で算定した月は再診では算定できず、その逆も同様です。また本加算を届け出た医療機関は、再診料の明細書発行体制等加算を算定できません。
実務上の緩和措置(疑義解釈より)
現場が詰まりやすい点について、いくつか緩和が示されています。
| 論点 | 取扱い |
|---|---|
| 電子処方箋の発行体制 | 原則は処方医全員だが、当面の間、常勤医2名以上(常勤医が1名のみの場合は1名以上)が発行できればよい |
| HPKIカードの取得待ち | 当面の間、要件を満たすものとして取り扱う |
| 地域ネットワークの活用実績 | 概ね2月に1回以上の閲覧・共有。加入から3月後までは猶予あり |
自院がどの区分を狙えるか、判定の手順
ステップ1:(1)〜(8)の充足を確認する
まず加算3のラインに到達しているかを確認します。実務上ここで論点になるのは、**マイナ保険証利用率30%**です。システム対応ではなく患者行動に依存する指標のため、直近数か月の実測値を月次で把握し、30%との差分を数値で確認してください。差分が大きい場合は、掲示・受付での声かけ・予約導線での案内など、案内フローの見直しがシステム投資より先に効きます。
ステップ2:(9)〜(11)のうち1つを満たせるか確認する
加算2(9点)は、(9)(10)(11)のいずれか1つでよい構成です。多くの医療機関では、(9)の電子処方箋が最も現実的な到達点になります。常勤医2名以上という緩和措置もあるため、まずここを確認するのが効率的です。
ステップ3:加算1に必要な要素を棚卸しする
加算1(15点)には(9)(10)(11)すべてが必要です。(10)ウは当面みなしで満たせるため、実質的な論点は**(11)をどう満たすか**に集約されます。
現時点では電子カルテ情報共有サービスの全国運用が始まっていないため、(11)アを満たせるのはモデル事業の参加施設に限られます。したがって多くの医療機関にとっては、(11)イ+ウの地域医療情報連携ネットワークのルートが現実解になります。自院が参加している地域ネットワークが上表の要件を満たしているか、運営主体に確認するところから始めてください。
ステップ4:改修コストと算定増加額を比較する
加算1と加算3の差は初診で11点です。月間の初診患者数から粗い試算を行い、必要な投資と見合うかを判断します。実額は患者構成により変動するため、判断の入口として使い、詳細は自院のレセプトデータで再計算するのが安全です。
AIBTRUSTの取り組み
ヘルスインタビューは、FHIR標準規格に沿った構造化データの生成を前提に設計された医療DXシステムです。問診の段階から情報が構造化されるため、電子カルテ情報共有サービスへの対応を進める際に、データ整備の負荷を下げられる構造になっています。
あわせて、ダイナミックコンセントによる同意管理と、改ざん検知が可能なアクセスログの保全機能を備えています。これらは加算の要件そのものではありませんが、医療情報の外部共有を進めるうえでの土台として機能します。
なお、加算の算定可否は医療機関全体のDX対応状況で決まるため、単一システムの導入だけで算定できるものではありません。オンライン資格確認・電子処方箋・マイナ保険証利用率といった要件は、別途整えていただく前提です。
より詳細な機能や連携イメージは、ヘルスインタビューのサービスページ、または FHIR電子カルテ連携ページ をご参照ください。
関連記事:電子カルテ情報共有サービスとは 関連記事:FHIRとは?医療データ標準化で何が変わるのか 関連記事:ダイナミックコンセントとは何か
現場で聞かれることの多い質問
Q. 医療DX推進体制整備加算はまだ算定できますか?
算定できません。令和8年度診療報酬改定で廃止され、令和8年6月1日から電子的診療情報連携体制整備加算に再編されました。医療情報取得加算も同時に廃止されています。
Q. 旧加算を届け出ていれば、新加算は自動で算定できますか?
できません。疑義解釈資料により、令和8年5月31日時点で旧加算を届け出ていた場合でも、新加算については改めて届出が必要とされています。
Q. 電子カルテ情報共有サービスに参加しないと加算1は取れませんか?
取れます。施設基準(11)は、電子カルテ情報共有サービスの活用体制と、一定要件を満たす地域医療情報連携ネットワークの活用体制の択一です。また(10)ウの接続インターフェース要件には、当面の間のみなし措置が置かれています。
Q. マイナ保険証の利用率要件は何%ですか?
加算1から3まで一律30%以上です。旧加算では最大70%が求められていたため、大幅な緩和となっています。算定月の3月前の実績が原則ですが、前月・前々月の実績に代替することもできます。
Q. 入院の加算にも電子カルテ情報共有サービスは必要ですか?
必要ありません。入院版(A207-5)の要件は、安全管理責任者の配置、複数方式でのバックアップ、BCP策定・訓練といったサイバーセキュリティ・事業継続性が中心で、電子カルテ情報共有サービスの要件は含まれていません。
まとめ
令和8年度改定で医療DX推進体制整備加算は廃止され、電子的診療情報連携体制整備加算へ再編されました。実務上の要点は次の4つです。
- 旧加算の届出は引き継がれないため、改めて届出が必要
- **マイナ保険証利用率は一律30%**に緩和され、上位区分が狙いやすくなった
- 電子カルテ情報共有サービスは必須ではない(当面の間のみなし+地域ネットワークとの択一)
- 入院版はサイバーセキュリティ要件が中心で、外来版とは別設計
まずは(1)〜(8)の充足状況とマイナ保険証利用率を実数で確認し、次に(9)電子処方箋で加算2に届くかを見る、という順序が最短ルートです。
自院がどの区分を狙えるか、既存の電子カルテのまま対応できるかといった個別論点については、医療機関向けのお問い合わせ からご相談ください。